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山田の傾国繚乱譜1 キャラメイク - 山田 健二

2019/01/14 (Mon) 20:12:37

どうして軍人になったのか。

誘われて傾国繚乱譜へ参加。名和さんは平均的パラメータの軍司令官兼伯爵様になると聞いて文武特化の郎党兼部下キャラを作成。アイコンは絵心が無いのでいらすとやさんから宮沢賢治を拝借。

やり直せたらどうするか

重要だった弁舌にもっと振って5-10-10-10-7-7で残り1をスキル「多言語話者」か10のうちどれかを11にするかも。それと、水軍じゃなくて水軍出身の近衛とか南だけじゃなく北にも西にも首を突っ込んでたとか後で色々捗るように設定を盛ります。

山田の傾国繚乱譜2 第1ターン - 山田 健二

2019/01/14 (Mon) 20:14:15

アクションの意図

オープニングを読んで「三公子の誰かと仲良くなるのが良いみたい。でも公子達のキャラがよく分からない」と悩んでたら「山田くん!海賊退治に行こう!」とお誘いいただき南行きの皆さんに護衛隊を率いる体で同行。

アクションの結果

海賊は弱まりましたけど、公子を含む南公国ご一同から嫌われて帝国と公国の間に諍いを作ってしまった。ゲンさんという火種はできるし、成果は西公子にさらわれるし、もう散々。護衛隊を率いたかはっきりしなかったのも残念。Discordでこのリアクションが出た時に烏丸さんがひょうげて庇ってくれた事は感謝してます。

振り返り

中間報告書を見た感じだと、「ただでさえ支持者が多い南だけがまとまって大きなアピールアクションを仕掛けてきた。海賊対策と鯨祭りが全部成功したら南派が他を圧倒してしまう」から中央と南の関係が悪化したりゲンさんというトラブルメーカーを残したりしたのでしょうか。

南公子がダウンして成果まで西公子にぶん取られたのはとても悲しかったですが、これは西公子に人気が無かったせいかも。多分皇太子候補アピールアクションを提案してくれる人が居なくて、でもイベント無しもあんまりなので支持者がたくさんいる南から分けてもらったと。

でもそれならヘイトを稼ぎまくった北公子いじめを無しにするか、結局南派が一番受けた的な話とか、フォローがあっても良かったよね、とちょっと恨みがましく思います。

今泉さんが受注してくれた猫グッズ作成が鉄型という形で登場したのはちょっと嬉しかった。

山田の傾国繚乱譜3 第2ターン - 山田 健二

2019/01/14 (Mon) 20:16:31

山田の傾国繚乱譜3 第2ターン

アクションの意図

嫌われた事を抜きにしても南公子の性格はちょっと嫌だなあ。西公子はよく分からないし、北が揉めそうだから名和さんから前回預かった?兵隊を連れてお手伝いに行こう、と決める。

今回は自分から動き、北原の方に相談していく中で姉小路さんから戸川さんへ銃を届ける事に。次は失敗すまいとアクションを書く際はマスターさんの過去作を一通り読んで参考にしました。

アクションの結果

文字数の都合で北の全ての方へは声掛けできませんでしたが、結果として良いとこ見せられました。関わる事ができた皆さんに感謝です。コメント曰く名和さんが送ってくれた海猫隊も後から着いたとの事で今回は山田的にうまくいきました。実は今泉製銃剣も持ってたんですよね。

ボツになったネタとしては孕石さんから「西に行く前に北公子へリルカとの融和を提案したら手打ちにされるかな」と話があったので「そいじゃ私は同道して庇いますよ」とした件と玉垣さんのゲンさんへの威圧協力がありましたが、西と北と南とそれぞれ向かう先が違うし出番的にも仕方ないですね。

振り返り

北原軍がぼろ負けでしたけどアハイヌ王が本当に凄いなら北原軍主力を破った後は全軍で喜津を陥落させて略奪をしたり第2軍や第1軍も各個撃破して北原に降伏勧告したり、本領北部から帝都にだって行けそう。

なのに喜津は放置、第2軍は見逃すし第1軍にはフンバイを撃破されるしでその後はてんで駄目です。序盤の圧勝もその後の無策ぶりも話の都合だったのでしょうね。だから割りを食った第13軍の皆さんが軒並み成長ポイント3だったのかなーと。

Discordの雑談部屋は概ね悲観的な様子。名和さんの「リルカなんて楽勝だぜ」という観測気球には反論多数。アハイヌ王はプレイヤーが勝つ決意を持って挑めば倒せる、とは言い出せない雰囲気。

タッチャーさんのアクションが効果なし、諏方さんの東風会建白書がコメントのみ、となったのは厳しい判定でしたが、今思えば「成果を出すためにはまず最善を尽くそう」という事じゃないでしょうか。

確かに「リルカを帝国の元で生き残らせたい」なら直接北に行って説得する方が効果的ですし、国を自分が良いと思う方向に動かしたいなら権力者を説得しないといけませんが、そのためには学生のままではなく高文を活かしてなるべく力のある地位につき、自分の意見に重みを加えた方が良いでしょうし。

でも塙田さんのアクションは投げっぱなしじゃなくて「リルカ領侵入は難しかったのでいくつか小部隊を撃破しつつつ北原府に到着した」ぐらいのフォローがあっても良かったような。

葉さんの死はショックでした。これは成長ポイント3ゲットは確実だと思ってましたから。理由が汚職で処刑なので残り2ターン清く正しく生きようと決意。

山田の傾国繚乱譜4 第3ターン - 山田 健二

2019/01/14 (Mon) 20:20:43

アクションの意図

何人かの方と相談しましたが「冬季攻勢は反対が多そうだし、意見対立でまずい事になるよりは諦めよう。」「でも動かなきゃ北原の民衆が何百万と死人ぬってリアクションにありましたよ。」「少しでも被害を抑えられるアクションを書こう。」という事になり、山田も北公子に励ましの手紙を送りつつ伊勢軍でお手伝いをするはずでした。

アクションの結果

確かに水軍の今後についての提言をアクションに含めてましたけど、北に居るはずが帝都に戻っていてびっくり。これは北原の軍が動けなかったためかも。(プレイヤー個々のアクションの結果として調略や腕木通信施設の推進は描写されましたが)

それと姉小路さんのアクション詳細は伺っていなかったのですが、リアクションの様子から山田と親密になっている必要があり、それに説得力をもたせる意図もあったのかも。

水軍の身で近衛を率いる立場にしていただきましたし、「思っていたのとは違うけどこれはこれで」という感じ。

姉小路さんの寝取られフラグを見た今泉さんから「恋破れたらうちの義妹世話しましょうか?」と冗談半分に慰められたのもいい思い出。

ボツネタとしては孕石さんの歌リアクションに協力したのですが、狼さんと被るネタですしこのターンのプレイヤー各自に割かれた文字数的にも仕方ないですね。

振り返り

戦争でまたアハイヌ王が帝国を出し抜いた事になってますが、あれは「北原の民衆が何百万人も死ぬのは嫌だ」という思いを汲んで「本領にリルカの主力が行っちゃえば北原の被害はその分減るよね」としてくれたのかな、なんて考えてます。

実際、北原の死者は予告からすれば最小値の百万人で本領にしても略奪とか虐殺とか御浜陥落の詳細を書かず治狼も無血開城となったあたり、大分気を使っていただいた印象。

プレイヤーの対立が書かれたのも見所。お互い公子の後ろ盾が無かった様子なので知力弁舌で圧倒する諏方さんが羽柴さんを押し切り、西公子の支持を得た竹中さんに後ろ盾のない田沼さんの弁舌が及ばなかった感じでした。

山田の傾国繚乱譜5 第4ターン - 山田 健二

2019/01/14 (Mon) 20:25:04

アクションの意図

治狼を手早く奪回して姉小路さんに会いに行こう、という要旨。中間報告書にあった葉さんが斃れた理由からできるだけ死亡や破滅を匂わせず明日に希望を持ったアクションになるように心がけました。

戦争関係ではリアクションでリルカが平原へ侵入しているかも、とあったので「本当にそうだとして、私なら倉妻の米を焼いて帝都の食糧危機を煽るなあ」と考えました。そのせいで姉小路さんに何かあっては敵わないのでお偉方に警告し対処を願いました。念を入れて治狼を取り戻したら山田軍は帝都の守りに戻るとも。

治狼については教わった水野さんの容赦ない奪回アクションだけでも勝てそうな雰囲気だったので協力して頑張るとしっかり書く事を念頭に置きました。

アクションの結果

最終報告書で戦争にも帝都動乱にも倉妻確保が影響ありだったと示されたのは「してやったり」です。

治狼戦の容赦無さには辟易しましたけど、水野さんアクションを考えれば「望みを叶えるためにはこれだけの覚悟を示さないと」となるのは分からなくもないですし、山田が大変な状態の姉小路さんを理解できる、思いやれるだけの経験をするという意味でも必要だったのかも。

陸側から協力してくれるのは孕石軍だったのですが、こういう展開をリルカに融和的な孕石さんがするはずもなく、手柄の割当て的にも鷹村軍に置き換わったのは仕方ないですね。

山田と姉小路さんの「その後」については文字数が少し余ったので「こんなだったら嬉しい」と思った事をいくつか書きましたら中止になった伊勢子爵帝都側披露宴出席や名鉄昇竜軍に関わるなど一部を除いてほぼ叶っちゃったという。

振り返り

アハイヌ王死亡の所、孕石軍6団の半分て事は3団で戦ったように読めます。公式サイトの戦力表だと王翼は4?とあるので「もしかして王太子ノーヴィーはマジェの改名じゃなくて別人で、マジェが帝都動乱に登場したりする?」と心配してたのですけど思い過ごしで良かった。

タッチャーさんとリルカ民族は今後が大変ですね。数え方によりますけど、100万人のうち生き残れたのが紅巾族と蒼狼軍の降伏者のうち帝国人を除いた分だけだとしたらもう数万人しか居ない事になります。なのに今度は故郷で兄と戦わないといけないという。

皇太子がプレイヤー投票で決まるのは事前に知りたかった~。お世話になった北公子のために選挙運動したかったですし、その他派が多数を占めたら国が滅んでたのかと身震いします。できれば他の選択肢が優位だった場合のIFストーリーも読んでみたい。

心残りとしては毎回協力アクションを試みてくれた孕石さんと一回リアクション上でユウジョウしたかった。まあ子供の数では勝ったよ!

山田の傾国繚乱譜6 最終報告書を読んで - 山田 健二

2019/01/14 (Mon) 20:27:58

やっぱり一人で何十人とやり取りするのは大変ですね。マジェとノーヴィーの件がただのミスというのはちょとがっかり。マスターさんには開示した設定を整理したりリアクションを校閲したり編集者的な仕事をしてくれるサポートの人が一人いたら良かったんじゃないかな、と思いました。

あちこちでアクションとリアクションの乖離に対する困惑、それによる他のプレイヤーのものを含めた積極的なアクションへの忌避感を見聞きしましたが、最終報告書の3ターン処理を読むと逆に消極的なアクションが致命傷になりかねなかった感じです。

「プレイヤーの皆さんは大半がゲーム開始時は軽輩ですけど権力者を通じて国に大きな影響を与えたりごぼう抜きで立身出世したりできます。そのための三公子です。もちろん自力のみでの挑戦もできますが後ろ盾ありの人と対立すると不利な判定を強いられるなど覚悟の上でお願いします。

出世レースのため三公子はどうしても対立しますので期せずして自分のアクションが誰かの足を引っ張る事もあるかもしれませんがご承知おきください。

リアクションでは様々なフラグが示されますが、あれはマスターによる可能性の提示みたいなもので、そうなると決まったわけではありません。プレイヤーの皆さんは全員が主人公属性持ちで、頑張り次第で圧倒的な大軍をあっさり打ち破ったり回避不可能に見えた大災害が起きなくなります。

Q&Aで断定的な回答はできません。どんな突拍子もない、内心書くわけないじゃんと思う話でもありえないと答えた後でもしも書いた方が良くなったら困るんで含みをもたせざるを得ません。それをどう解釈するかはプレイヤーの皆さんの判断です。」

結果からの想像ですが、開始時点でこんな感じに説明があれば色々な意味でもうちょっと、なんて僭越ですが思いました。

最後にこんな事を書いた後でなんですけど、何だかんだで山田は傾国繚乱譜がとても楽しかったですよ。マスターさんもプレイヤーの皆さんもお疲れ様でした。またどこかで一緒に遊ぶ事があったらよろしくお願いします。

Re: 山田の傾国繚乱譜1 キャラメイク - 伊勢進駆郎の中の人

2019/01/15 (Tue) 21:44:06

どうも御無沙汰しております。
北府武官、伊勢進駆郎の中の人です。

私も、山田様と共に行動できまして、傾国繚乱譜をとても楽しめました。これも山田様のお陰です。どうも有り難うございました。

実は、私は、「PROJECT SERENDIPITY」に参加しております。ですので、もし貴方も「PROJECT SERENDIPITY」に参加なさっていらっしゃるのでしたら、また宜しくお願いします。

では、取り急ぎ用件のみで恐縮ですが、そろそろこの辺で。傾国繚乱譜では大変お世話になりまして、重ね重ね有り難うございました。電筆乱文にて失礼致します。

Re:Re: 山田の傾国繚乱譜1 キャラメイク - 山田 健二

2019/01/16 (Wed) 22:43:21

伊勢さん、こちらこそ楽しい時間をありがとうございます。

「PROJECT SERENDIPITY」ですがもたもたしている間に売り切れていて参加できませんでした。残念です。

リアクションが何らかの方法で公開された場合は入手するつもりでいますので、伊勢さんがまたまた大活躍される事をお祈りしております。

プライベートリアクション【烏丸秀最期の七日間】1 - 烏丸秀

2018/12/19 (Wed) 18:09:35

皇瓏学寮の一室。学生の一人、佐藤博光は担当教授である佐久間翔山の研究室を訪れた。既に夜分遅くだが、史学科の名物教授である佐久間は常日頃から夜分遅く、下手をすれば朝まで資料を検分する事で有名だ。
先日何やら珍しい古書を手に入れたと自慢していたから、おそらくはそれに関してだろう。

「佐藤博光、入りま……」
「早速だがこれを見てくれ」

資料が山と積まれた研究室の中、佐久間は挨拶もせずに部屋の中央に佐藤を招いた。毎度の事なのか慣れているのか、佐藤は早速部屋の中央の机を覗き込む。
そこに置かれていたのは、一冊の本だった。間違いなく、教授が手に入れたという古書だろう。

「今度は何を手に入れたんですか、教授?」
「第二世紀の本なんだが……ここを見てくれ」

佐藤はどれどれと覗き込み、そして顔を顰める。字が汚く、ところどころ擦れていて読みにくい。これを解読するのは、ずいぶん骨が折れそうだ。
教授が指さす部分――古書の目次の部分だろうか。そこを佐藤はかろうじて読み上げる。

「――『帝都奉行所・烏丸秀取調記録』?」
「日付は帝国歴101年9月。キミ、これが何を意味するか分かるか」
「烏丸秀って……あの、『頼雄公記』に出てくる大悪党の?」

佐藤の専門は皇祖以前の時代だが、それくらいは知っている。六代皇帝・織田頼雄が即位するまでの一連の動乱を描いた『頼雄公記』は、帝国内で人気の読み物だ。

「確か、六代帝のライバルだった、清澄公子を唆した奴ですよね。海賊と手を結んだり、帝都の米相場を操って大儲けしたり、最後は帝都で反乱を起こして処刑された……」
「最近の研究ではそこまでの大物でもなかったのではないか、という説が有力だが、まぁいい。そう、これはその烏丸秀が処刑されるまでの取調を記録した書物ではないかと思われる」

佐藤は唸った。もし本物なら、これは物語に出てくる時代の一級資料だ。
気乗りのしなかった教授の手伝いだが、こんな面白そうな資料が出てくるならば話は別だ。佐藤は上着を脱ぐと、腕まくりして佐久間教授とともに解読作業を開始した。


【烏丸秀最期の七日間】


帝国歴101年・9月10日

与太郎は気乗りのしない顔で帝都奉行所の地下牢の階段を降りていた。別に彼自身がぶち込まれたわけではない。帝都奉行・里見覚の供である。
七月に酒を奢ってもらって以来だが、今度は有無を言わさぬ呼び出しであった。別に酒や食事が出るわけでもなく、ただ覚について来いと言われただけである。
行先は地下牢の最奥。決して逃がしてはならない重罪人を係留する為の場所であった。

「一体なんでこんな場所へ連れてくるのか、そろそろ教えちゃくれないかねぇ」
「黙ってついて来い」

覚の護衛である役人に言われ、与太郎はさらに不機嫌な顔になる。いきなり呼び出され、こんな辛気臭い場所へなんで連れてこられなきゃならんのだ。
ようやく目的の場所――最奥の座敷牢へと到着すると、覚は護衛を外に残し、与太郎だけ中へ入るよう促す。
一体何をさせようかってんだか――そう思いながら牢へと入った与太郎が見たのは、見知った顔だった。

「――烏丸の若旦那!?」
「やぁ、与太さん、久しぶり」

そこにいたのは、間違いなく烏丸秀であった。髪は乱れ、ところどころ服は破れ、手足は鎖で繋がれ壁に寄り掛かった、見るも無残な姿だが。

「と……帝都奉行様自らとは、また畏れいるね。久しぶり、覚お嬢様」

楽しそうに言う烏丸に対し、里見覚は何も応えない。代わりに与太郎の方を向いて言った。

「見ての通りよ。国事犯・烏丸秀は先月、金岡で反乱煽動の罪で捕縛しました」
「――にしても懐かしいねぇ。三人で集まるの、あの茶会以来じゃない? 盛舟も来れば、茶会メンバー勢ぞろいだ。来てないの?」
「黙りなさい」

覚はピシリと言うが、烏丸はヘラヘラと笑っているだけだ。与太郎は何か声をかけようと思ったが、何も思いつかず、覚の方を向く。

「――で、俺っちに何をしろってんでい」
「あなたも取り調べに立ち会いなさい。それで、こいつの言う事に矛盾や不審な点があったら教えて」

覚は烏丸から、帝都に残った南海派の情報を聞き出し、自分が離任するに際してそれらの不穏分子を一掃するつもりだった。
与太郎はその証言の検証役だ。かつて南海派に属していた彼なら、烏丸の言う事の矛盾点を見抜ける筈だから。

「烏丸秀。あなたが何故金岡なんかで反乱を起こしたのか。私が聞きたいのはそこよ」
「何故って言われても、ねぇ」
「あなたの目的はただ一つ、清澄公子奪還のはず。なら反乱を起こすのは帝都か、その近郊でしょう。遠い金岡なんかで反乱を煽動した理由は、帝都での同時蜂起を画策して失敗したんじゃなくて?」

覚には確信があった。烏丸秀は決して、清澄の天下を諦めない。
かつて、里見家が彼を開いて大茶会を開いた事がある。その準備の最中、覚は彼の想いの一端を聞いていた。

『ボクはね、立身出世も帝国の歴史を動かす事も望まない。ただ清澄公子の行き着く先が見たいだけなんですよ』

そう語った彼の目に偽りはなかった。自分の持つ読心の力も、それを肯定している。
だからこそ、金岡で彼が反乱を企図し失敗したと聞いた時、にわかには信じられなかった。

「ボクがそんな器用だと思われても困るなぁ」
「ならば何故、何故あんな自殺のような真似をしたの?」

そうだ、自殺だ。既に軍団が戻り、厳戒態勢となっていた金岡で反乱を企図するなど。
どのような手を使ったかは分からないが、彼はサバルタまで逃げていたらしい。清澄の為を思うなら、サバルタで力をつけ清澄奪還を狙うか、あるいは帝都の旧知の人間を煽って清澄を助ける事を計画するはずではないか。
もし清澄を見捨てるなら、それこそサバルタで別人になって暮らせば良い。わざわざ金岡まで戻ってきた意味が分からない。

「――清澄公子は南海領へと入ったわ。あとは永蟄居、二度と表舞台に上る事もないでしょう。清澄公子の人気が消え失せる前にと、焦ったのかしら?」
「え?」

そこで烏丸は初めて表情を変える。その表情に覚、そして与太郎も驚愕を隠せなかった。
清澄が生きている事を知った烏丸は、苦々しく吐き捨てた。

「なんだ、まだ生きてるのかアイツ」

頼雄も存外不甲斐ない、と呟く烏丸を見て、覚と与太郎は知覚せざるを得なかった。既に烏丸秀の忠誠は、津田清澄の元にはない。彼は、もっと別の目的で動いている。

その日の取り調べで分かった事といえば、烏丸がサバルタで知己の元に匿われていた事、そこを追い出されたので仕方なく金岡へ行き鉱山労働者の煽動を行った事、くらいだった。
里見覚は与太郎に取り調べを一任する。既に金岡と帝都への道中で拷問を行っており、これ以上責め立てても情報を吐くとも思えなかった。だが、旧知の与太郎相手ならば、ぽろっと何かを漏らすかもしれない。

「処刑は一週間後。その日には何があろうと彼を処刑するし、私は夫と一緒に任地に向かうわ」

こうして与太郎は一週間の間、烏丸の元へ通い、彼と話す事になる。

プライベートリアクション【烏丸秀最期の七日間】2 - 烏丸秀

2018/12/19 (Wed) 23:51:21

帝国歴101年・9月11日

日が明け、与太郎は再び烏丸を訪ねた。一応見張りが彼の体を点検し、危ない物を持ち込んでいないか確認する。こんな地の底から自力で出られる人間など、居ないだろうに。

「よう、烏丸の若旦那」
「もう若旦那じゃないよ、与太さん。今日は一人?」

まるで自室に招くような気軽さだが、あまり活気はなかった。長い拷問や護送は確実に烏丸の体力を奪い、処刑しなくとも近いうちに彼の命が尽きるのは明白だろう。
与太郎は座敷牢に座りこむと、話を始める。

「一応尋問って事なんだが、なぁに、世間話さ。今まで何処で何してたのか、ひとつ聞かせてくれよ」
「そんな面白い事でもないけどねぇ」
「それに、俺も気になってたのさ。なんでわざわざ、金岡なんかで事を起こしたんでい?」

烏丸はその言葉に、あの日の光景を思い出していた。


「お世話になったね、姫」
「――死にに行く気か」

王女グレナの言に、烏丸は薄く笑うだけで応えなかった。それが明白に答えとなっていた。
もし烏丸がここに残り、そしてそれが帝国に露見すれば、必ず帝国はここに追手を出す。なにせ、帝都で反乱を企図した国事犯だ。サバルタもそんな人物を庇いきれないだろう。そしてここに踏み込まれれば、烏丸の最後の策が無へと帰す。そんな事は断じて出来なかった。
故に、烏丸秀は死ぬ。それも、帝国が彼が死んだと明確にわかるように。それを為してこそ、この策は完成するのだ。

「――あ、もしかして止めてくれるの? 姫が泣いて縋ってくれるなら、ボクも考えなおしても」
「どうせ死ぬなら家賃を払ってからにしろ」

烏丸の戯言(言った本人は半分本気だった)を軽く流しながら、グレナは告げる。

「金岡の城、あれの強度が知りたい。それも外部ではない、内部のだ」
「――後日、金岡奪還の材料にする為に?」

グレナは無言で頷く。金岡奪還はサバルタの悲願だ。しかも、鉱泉金工の活躍により、帝国の鉄鋼技術はついにサバルタを追い抜いた。このままでは一生帝国の属国として生きる事になると彼らが焦るのも無理はない。

「物見の報告によると、須崎の軍団がもうすぐ金岡に戻るそうだ。お前はそこで内部工作をし、反乱を起こさせろ。そしてそれがどう鎮圧されるのか、詳細を私に伝えるんだ」

当然、鎮圧される様子など悠長に見ていては生きては帰れない。この王女は、それを承知で言っている。サバルタからの支援などは、もちろん、ない。
須崎の造り上げた堅牢な金岡城を普通の方法で落とせるとグレナは考えていなかった。烏丸から様子を聞いた三矢演習でも、補給が切れてなお金岡城はサバルタの攻囲を持ちこたえたという。
ならば内部から突き崩すという発想に至るのは当然だ。その為に、金岡が反乱に対してどう対処するのか、それを見ておきたかった。そして、その実行にうってつけの人物がここに居る。

「――臨嬢とおなかの子は」
「この任を成し遂げれば、我が名誉にかけてその身を保証する。帝国にも母上にも渡さん」

それを聞いて烏丸はにっこりと頷いた。ならば心残りは何もない。
いや、一つだけあった。この姫騎士をついに落とす事が出来なかった。まったく、金岡城の如く堅牢な女性だった。


もちろん、これらの事を与太郎に告げてはいない。烏丸はただ、食うに困ってやった、とだけ答えた。

「いや、逃亡生活って本当にお金に困るね。今まで逃げた遊女たち、あんな大変な事してたんだ」
「ほとんどの遊女はみぃんなすぐ身投げしちまうさ。仏様があがってこないだけだよ、若旦那」

こうして話していると、まるで花街で二人して遊び歩いていた頃に戻ったようだった。
その日は特に収穫もなく、与太郎は帰っていった。


帝国歴101年・9月12日

次の日は身体検査が無かった。牢番も、もう中の人物が逃げる気など無い事が分かっているのだろう。与太郎は牢の扉をくぐると、座敷へと座った。

「今日は与太さんの話が聞きたいなぁ」
「なんでぇ、俺っちの話なんて聞いたってしょうがないだろう」
「六月十日以来、ボク、帝都の事を全く聞いてないんだよね。どうなったの?」

与太郎はかいつまんで話す。帝都の状況、学寮の生徒たちがどうなったか。南海派の人間たちに厳しい罰が下されたが、最初に処刑された官僚と組木を襲撃した環たち以外で死んだ人間はほとんど居ない事、そして西派が凱旋しこの世の春を謳歌している事。

「そっか、たまちゃんはダメだったかぁ」
「あぁ、それと須田のお嬢ちゃんが行方不明さ」

それについて烏丸は何も答えなかったが、少なくとも環の死を悲しんでいる様子ではあるようだった。

「……南海派の人間の死を悼むならよぉ、なんであんな事言ったんだ、若旦那?」
「あんな事?」
「清澄坊ちゃんの事さ。まるで、もう興味はないみてぇによぉ」

吐き捨てるように「なんだ、生きてるのか」と漏らした烏丸の言が、与太郎には理解できない。未だ南海派の事を思うなら、首領である清澄の事をこそ心配すべきではないのか。

「……清澄様は死んだんだよ。今動いてるのは、どうせ抜け殻だよ」
「はぁ?」
「『津田清澄』というのは、あくなき野心の為に天下を目指した男の名前だ。それを放棄した以上、今動いているのは抜け殻に過ぎないよ」

南海領へ去ったと聞いて、烏丸は清澄を見限った。もし清澄がまだ天下を諦めないなら、地の底に潜ってでも頼雄への対抗を諦めず、そして死んでいただろう。
それが為されなかったという事は、もう津田清澄という男は抜け殻だ。少なくとも、烏丸の主君ではない。
彼の主君は今、サバルタに居る。『津田清澄』の名前を継ぐべき者が。

「……そっか。若旦那にとっての津田清澄って坊主は、そういう存在だったか」

与太郎も、なんとなく清澄に対する烏丸の想いを理解し、話を打ち切った。多分、烏丸が生きた清澄に言及する事はもう無いだろう。それが肌で感じられた。
しかしそうなれば、余計に分からない。

「じゃあ、若旦那にとっての今の目的ってのは、なんだったんで?」

それが与太郎には分からない。目の前の烏丸は、とてもではないが抜け殻には見えない。それどころか、死を前にして楽しそうに笑っている。
自暴自棄ではない、厭世でもない。烏丸秀は、何か明確な目的をもって生きている。与太郎にもそれが分かるし、里見覚が感じた違和感もそこに端を発するのだろう。

「当ててごらん、与太さん。今のボクが何を望んでいるのか。ボクに会いに来てくれるうちは、ヒントを出すからさ」

プライベートリアクション【烏丸秀最期の七日間】3 - 烏丸秀

2018/12/20 (Thu) 19:57:49

帝国歴101年・9月15日

「よう、ご苦労さんでござんすね」
「お前もな。お、すまんな」

牢番に差し入れを渡しつつ、与太郎は牢の扉をくぐる。
すっかり顔なじみとなったおかげでフリーパスだ。おかげでこんなモノも持ち込める。

「へへ、若旦那、ま、一献」
「もう若旦那じゃないってのに」

烏丸は手鎖をつけた手で、苦労しながら杯を口へと運ぶ。自分はぐい飲みでいっぱいやりながら、与太郎はちらりと後ろを見た。もう牢番は何も言ってくる気配もない。こんな地の底の番などしていて、辟易している事だろう。よく見れば、先ほど差し入れた酒を早速煽っていた。
取り調べは継続している。昨日一昨日は取り留めもない話をして終わったが、今日は烏丸から話があるようだ。

「与太さん、実は頼みが一つあってね」
「――あんま無茶はできませんぜ。なにせ奉行所は若旦那を警戒している」

後ろで酒を飲んでいる牢番とて、脱獄を許すほど甘くはないだろう。出る時はさすがに身体検査があるので、秘密の手紙などもご法度だ。だが、烏丸はゆっくりと頭を振る。

「うん、実はね、与太さんに迷惑をかけるかもと思ってやめといたんだけど――やっぱ、頼んでおいた方がいいと思ってさ」
「勿体ぶりやすね。なんざんしょ?」
「ボクのね、娘の面倒を見てやってほしいんだ」

与太郎はぐびりと酒を飲み込み目を丸くした。烏丸の、娘?
烏丸秀は、清澄の側近になるまで放蕩ものとして知られていた。「夜の大将軍」こと津田の大殿、そして朝倉銀蔵と若くして肩を並べる、花街では名の知られた色男だった。
しかし、烏丸に娘が居たなどと聞いた事もない。そもそも飽きっぽく、すぐ河岸を変える事でも有名だったのだ。

「――若旦那、ガキをこさえてたんですかい?」
「うん、遊びはじめてすぐの頃にね。今、いくつになってるかな?」

娘の年すら覚えてないと烏丸は言う。跡取り息子がこぶつきなどと知られたくない烏丸商会の主、左門が金を握らせ花街から追い出したらしい。
今では帝都の片隅で、娘と一緒に茶屋をしているそうだ。それなりに繁盛しているが、教導所もその娘の事を把握している事だろう。多分、商売はやりにくくなるに違いない。

「まぁ、国事犯の娘だからね。この先、生き辛いと思うんだ」
「……それはまぁ、そうでやしょうねぇ」
「頼むよ。ボクが与太さんにあげられるもの、もう何も残ってないけど」

与太郎はこういう頼みに弱い。無条件で頼られると、つい引き受けてしまいたくなる。ようがす、と首を縦に振った。

「ただし、必要以上に助けはしませんぜ。本当に困った時だけ、でやす」
「それで十分だよ、ありがとう」

烏丸は薄く笑って言った。

「ボクのたった一人の子供だからさ。この先、多分大変だろうけど、それなりにうまくやるんじゃないかな?」


帝国歴101年・9月16日

「烏丸秀、明朝をもって斬首とする」

その日は司法所の役人と一緒だった。もったいぶった声で死刑宣告を読み上げる役人を、烏丸は相変わらずの薄い笑いで見守っている。
里見覚は一日早く、夫の筆木候とともに北方へ旅立った。新婚の門出に、血なまぐさい仕事をさせたくないという皇帝の配慮だという。刑は司法所が主導で行う事になる。
与太郎はもう口も挟めない。彼の役目は終わったのだ。あとは、取り調べで得た情報をまとめて、奉行所に提出するだけだ。

「辞世の句があれば承る」

烏丸の処刑は、公開せず奉行所内でひっそりと行われる。本来ならば、公開処刑が妥当な罪だが、ようやく帝都動乱も終わり安寧を取り戻した帝都市民たちに、血なまぐさい処刑を見せたくないとの意見が執政府で可決された。烏丸の処刑は非公開で行われ、官報に記録だけが載る。
よって、辞世の句も処刑場ではなく、この場で役人が受けるとの事だった。
烏丸は少し考え、言う。

「……世の末を、清く澄ませば、策あらん」

司法所の役人は驚いたように烏丸を見て、そして睨みつける。烏丸を見る与太郎の目も驚愕に満ちていた。

『清澄様の為の策はまだある、お前らの好きにはさせない』

これは、烏丸秀が投げつけた、頼雄の治世への挑戦であった。たとえ清澄自身が舞台を降りても、自分だけは最後まで挑戦者であり続けるという。

「――負け惜しみを!」

司法所の役人とともに、与太郎も退出するが、その目はこう言っていた。
若旦那、なんで、清澄様はもう見限ったんじゃないんでやすか、と。
その問いに答えが返ってくる事はなかったが、代わりに烏丸は与太郎に向かって言う。

「与太さん、長生きしなよ。あと20年、いや15年もすれば、きっと面白い事があるからさ」


帝国歴101年・9月17日

この日の早朝、国事犯・烏丸秀は斬首され19年の生涯を閉じた。
遺体を引き取る者はなく、無縁塚に葬られたという。



帝国歴101年・11月25日

日に日に寒くなる帝都の街路を、与太郎はとぼとぼと歩いていた。

「……長生きしたってどうなるんだよ、若旦那」

街には喧騒が溢れ、皆が復興に向かって歩んでいたが、与太郎は面白くもない。
かつてこの街は帝国の中心だったはずだ。人も物も、すべてがこの街に集まった。今はといえば、北の開拓に南の鉄道、皆が帝都を巣立ち帝国各地へと根を下ろそうとしている。
灰色の風景。昨日と同じ今日。フロンティアの開拓。この街は、最前線ではなくなってしまったのだ。そんな街で長生きして、何が見られるというのか。

「おう、与太郎! てえへんな事が分かったぞ!」

振り返ってみると、そこには息を切って走ってきた男が一人いた。確か、南海商業組合の連絡役だった男で、須田臨と懇意にしていたはずだ。彼女だけでも南海に逃がそうと手配をしていたが、その前に須田は帝都から消えてしまったらしい。

「なんでえ、藪から棒に」
「須田のお嬢ちゃんが見つかったんだよ!」
「はぁ!?」
「それがよぉ、サバルタだよサバルタ! あのお嬢ちゃん、んなとこまで逃げてたんだとよ!」

与太郎は黙った。何かのピースが嵌ろうとしている。
サバルタ。かつて烏丸秀が潜伏していた場所。そして、そこへ逃げていたという須田臨。

「なんでんな場所に」
「なんとあのお嬢ちゃん、こないだ処刑された烏丸の野郎の子供を孕んでたんだとよ! あの色男、まさか主君の女中に手ぇ出してたとはなぁ……」

そりゃ帝都にも南海にも居づらかろう、と呟く連絡役の男の声を、与太郎は既に聞いていなかった。
烏丸と須田が? そんなはずはない。少なくとも、あの二人に接点は無かった。須田はここ最近、ずっと清澄の世話をしていたはずだ。
それに、烏丸の言葉。

『ボクのたった一人の子供だからさ』
『なんだ、まだ生きてるのかアイツ』
『津田清澄というのは、あくなき野心の為に天下を目指した男の名前だ。それを放棄した以上、今動いているのは抜け殻に過ぎないよ』
『世の末を、清く澄ませば、策あらん』

繋がった。すべてが繋がった。
烏丸秀最期の策。与太郎はそのすべてを理解し、同時に烏丸の出した問題の謎を解いた。

「……はっは、若旦那、そんな事だったのかよ!」

与太郎は笑った。大笑いした。これほど痛快な事は、あの帝都動乱の日以来久しくなかった。

『与太さん、長生きしなよ。あと20年、いや15年もすれば、きっと面白い事があるからさ』

烏丸の声が耳元で聞こえたような気がした与太郎は、怪訝な顔をする連絡役の男に言った。

「おう、飲みに行こうぜ。今日は気分がいいんだ、こいつを書いた謝礼金、ぜーんぶ飲んじまおう!」

与太郎は手に持つ『帝都奉行所・烏丸秀取調記録』を振り回しながら言った。

Re: プライベートリアクション【烏丸秀最期の七日間】1 - 伊勢進駆郎の中の人

2018/12/21 (Fri) 21:38:47

この期に及んで初めてお返事差し上げます無礼をお許し下さい。
北府武官、伊勢進駆郎の中の人です。

早速ですが、上記のプラリア、拝読しました。
とても面白かったです。
何より、元ネタ(公式リアクション)の解釈内容も面白かったのですが、とても文章がお上手で、最後まで没頭して一気に拝読できました。
面白いプラリアを書き込んで下さり、誠に有り難うございました。


では、取り急ぎ用件のみで恐縮ですが、そろそろこの辺で。
烏丸様のご冥福を切にお祈りしております。
電筆乱文にて失礼しました。

第二ターンあくしょんに向けたSS - 【傾国】玉垣環の中のひと

2018/06/02 (Sat) 11:53:06

こんにちわ!巷ではカニタマーとまで言われてる環のなかのひとです!

今日はアクション締切ですね!みなさま進捗いかがですか!環はなんとかなりそうです!

アクションを考えるにあたりぽろっと生まれたSSを供養させていただければと、UPさせていただければと!

※>マスターさま
妄想設定に不都合があれば削除いたします!
======================
百年祭から数日の後、玉垣環は南海府に向かっていた。

南山公津田照澄が息子切澄の葬儀のために帝都を出立した翌日、玉垣本家からの使者が環の元を訪れる。

「お嬢、お久しゅうございます」
「その呼び方はやめて九朗」
九朗と呼ばれたその美丈夫は環の前で跪き深々と頭を垂れる
(普段の環を知る者が見たら二度見必至の光景だが)
精強を誇る玉垣道場において次の師範と目されるほどの使い手であり、環にとっては兄弟子でもある、
その九朗――牟田九朗を敢えて寄越す、諸々に鈍い環でもただ事ではないと容易に感じ取ることができた。

「で、なにがあったの?」
「切澄様の件は御存じですね?」
しばしの沈黙
「…ええ、若様が大層心を痛めておいでです」
「近頃の海の様子も?」
「それなりには」
「その絡みで、マガツ除けの宣下が降りました」
「…まさか?!」
ふたたび、沈黙
「…父さまがそのように判断したのであれば…」
「ではお戻りくださいますか」
「先ほど若様の名代として切澄様の葬儀への出席の命を受けたとこだから、ちょうどいいといえば、ちょうどいい…」
「お嬢…」
「だからその呼び方はやめて」

南海津田家指南役を輩出したこともある玉垣家は、かつてマガキと呼ばれた海賊の一族である。
一族は馬海のとある島を拠点としていた。
マガキとはすなわち「馬海が鬼」、その島は「鬼ヶ島」と呼ばれていた。

マガキの一族は長い年月をかけ独自の武術体系を発展させ、それゆえ水の上では無双の強さを誇った。
その武と技を用い馬海を行き交う船舶の水先案内人を務め、同時に守ることで生計を立てていたのである。
そしていつしか、マガキの印を得た船を襲うものはだれひとりとしていなくなった。
現代において龍見海よりも馬海のほうが比較的穏やかなのはそのせいである。

当時のマガキ当主と先々代南海公津田弾澄の数奇な出会いにより、マガキは玉垣の名を得て陸に上ることとなった。
かれこれ60年ほど前のことである。

マガキの一族に伝わる儀式によって得られる結果で、最悪のものをマガツと呼ぶ。
一族として、これを放置するわけにはいかないとの判断、それがマガツ除け。
(なお、儀式=亀卜です)

それほど、阮紅蓮という男は、危険な存在なのであった。

九朗が駆る馬上にて、その背に顔を埋めひとりごちる
「環は若様のお役にたてているのかなぁ…」
「お嬢?」
「なんでもない、てゆうかその呼び方ほんとやめて」

===========

Re: 第二ターンあくしょんに向けたSS - 伊勢進駆郎の中の人

2018/06/03 (Sun) 17:48:13

お初にお目にかかります。
伊勢進駆郎の中の人です。
これから暫くの間、宜しくお願い致します。

さて、SS拝読しました。
おつくりになった設定が既存の設定に上手くはまっていまして、その技術に感心致しました。とても興味深く、面白かったです。

では、手短で恐縮ですが、この辺で。
重ね重ね、これから宜しくお願い致します。

Re: 第二ターンあくしょんに向けたSS - かにたま

2018/06/06 (Wed) 11:39:21

伊勢進駆郎さま

お褒めの言葉をいただきありがとうございます!
こちらこそよろしくお願いいたします。

中の人は妄想設定(ちゅうにびょう)で世界を侵食していくスタイルなので、GMさんが困ってしまわないか心配です。
…ですがそこは自重せずに吶喊していこうとおもいます!

このあとすぐ第二ターン初回リアですね!
楽しみです!!!

内憂外患 - 【傾国】護堂颯司の中の人

2018/05/22 (Tue) 19:11:40

 タイトルがタイトルだけにこのまま平和にいくとは思って
ませんでしたが(苦笑)。

 北は、実質、開戦。西は開戦前夜。南はPCの方々の迅速な
対応もあって、収まりつつも波乱の種を残し。そして飢饉の
兆しありと。

 危機のひとつひとつ自体は帝国が総力を上げればどうという
ことはないのかもしれませんが。
 優先順位は考えておいた方が良いのかもと思ったり。

帝都大茶会のお知らせ - 烏丸秀の中の人

2018/05/21 (Mon) 06:18:22

「帝都大茶会」概要

帝都にある、里見侯爵家の有する森にて大茶会を開く。
茶を楽しむ人間ならば、身分を問わず誰でも参加可能。参加者は自慢の茶道具を持ち寄り参加されたし。
(道具が無い場合は、こちらから貸し出す事も可能)
主催は烏丸商会。協賛は里見侯爵家。
烏丸秀の目利きした名物なども陳列する。

※次ターンのアクションで帝都で大茶会を開きます。
茶席を開く方、茶会に参加する方を大募集。多くの貴族・富裕層が参加する予定ですので、パトロン探しなどにご活用ください

サバルタとの早期和平について - 竹中官兵衛

2018/05/19 (Sat) 16:50:57

 こんにちは、竹中官兵衛の中の人です。

 自分は運河完成阻止が達成されたらサバルタとの和平に持ち込みたいと考えております。
 これに賛同なされるPCの方と共同アクションを行いたいと思います。
 共同アクションはパワー!と思っております。
 参加しても良い方はご一報ください。

 それでは、失礼いたします。

【傾国】PCを分析してみると - 護堂颯司の中の人

2018/05/17 (Thu) 00:03:29

 こんばんは。護堂颯司の中の人です。
 せっかくマスターがPC一覧をUPしてくれたのでちょこっと
分析っぽいことを。あくまで個人の感想になりますが。

 全キャラ49人中、男35人、女14人、平均年齢25才(14
~50)。ゲームのテーマを考えれば、男女比及び年齢につい
ては妥当なところではないかと思います。
 そして能力値の平均がつぎのとおりでした。
 出8(5-20)、知9(5-18)、体6(5-12)、弁8(5-18)、
 安7(5-14)、持7(5-12)、独5(0-15)。
 出身、知力、弁舌が高めなのは、世界観からなんとなく理
解できますし、安定と持続については(リアや判定に)どう
反映するか微妙に解りにくい気もするのでこの数値は納得
です。
 意外だったのは、PBMでは概ね見かける体力特化型がいな
かったことと、独自技能0振りが17名もいらっしゃったこと
ですね。

 そして気になる派閥構成。5月16日までに自分が受け取っ
たリアから勝手にヒモ付けしての推測になりますが。
 やはり一番人気は南公子でしょうか。これは概ね予想通り。
そして次がたぶん北公子。現時点では意外に西公子閥が少な
いように思えます。あくまで表面的なものですし、今後どん
どん変わっていくのは当然だと思いますが。

 以上、次のリアが来るまでのネタ提供にでもなればと思い
投稿してみました。
 最後になりましたが、みなさま、これからよろしくお願い
いたします。

Re: 【傾国】PCを分析してみると - 伊勢進駆郎の中の人

2018/05/18 (Fri) 19:45:24

どうも御無沙汰しております。
伊勢進駆郎の中の人です。

PC分析お疲れ様です&有り難うございます。
出身・知力・弁舌が高めで、体力が低めなのですね。どうも伊勢のそれらの逆になっていますね。
こういった分析結果が出ましたのは、武官タイプよりも文官タイプの方々が多いからでしょうか?とても興味深いです。

最後に、護堂様、同じ北原府の武官としまして、これから宜しくお願い致します。

SSなどを - 烏丸秀の中の人

2018/05/06 (Sun) 17:58:56

はじめまして、烏丸秀PLです。
先人お二方に習いまして、SSなどを投稿させていただきます。
賑やかし程度になれば幸いでございます、しばしお付き合いくださいませ。

―――――――――――――――――――――――――

帝都はうららかな陽気に包まれている。
建国百年祭も間近であり、大通りは活気に満ちている。

そんな大通りから離れた、とある建物。
華美であるが裏通りに程近いそこは、帝都でも有名な遊郭であった。
そのニ階の一室で、皇瑯学寮の学生・烏丸秀は煙管を燻らせていた。

「……なにとぞご指導、ご鞭撻を賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。あとは同じで」

何をしているかと言えば、家から連れてきた手代に、手紙を代筆させているのである。
自分で書くのが面倒だし、この手代は字が綺麗なので、父親である当主の左門も祐筆に使っているくらいだ。

「若旦那、こんな手紙書くだけでいいんですか? 学校での授業は……」
「あのね、国の最高の頭脳が集まる学府だよ? ボク程度の頭で学問したところで、焼け石に水だよ」

呆れたように手代の常識論を一蹴する。自分の頭の出来は自分がよく分かっている。そもそも難しい学問をするのに向いていない。
今日の授業は確か、古典的な兵法に関する討論だったか。多分、軍人達の独壇場だろう。烏丸のように実戦経験も知識も無い人間が行った所で何も学べる事などないだろうから、堂々とサボった。こういう事をすると、またあの妓楼の帳簿つけをしていた娘に怒られそうだけど。

烏丸が皇瑯学寮へ入学した時に求めたのは、自分と同期で入寮した者たちのリストだった。そこには大物貴族の息子や自分と同じ商家の出身者、さらには高文を突破した天才たちや、各種一芸を持った人物がずらりと並んでいる。
そして烏丸は、脈がありそうな所に片っ端から挨拶の手紙を出しているのだ。
出席の義務が無いのを良い事に、烏丸は授業にほとんど出ていない。落第も良い所である。
もっとも、私費留学生はそもそも役職に就く者も少ないし、真面目に授業に出る事も期待されてなど居ないのだから、どんなに遊び呆けても誰も損はしないだろうというのが烏丸の持論だが。

「失礼します。若旦那、手紙が来てはりますよ」

持って来たのは、烏丸の馴染みの遊女で、彼女は何通かの手紙と小包を烏丸に渡した。
烏丸は手紙を受け取り目を走らせる。

「――鉱泉金工の跡取りさんからの返書だ。その包みの中身は返礼の懐中時計だってさ」

小包の中から出てきたのは、ずっしりとした懐中時計。
華美な装飾などはない、実用一点張りの物。だが、烏丸の目にはそれが好ましく映る。
今ある技術の全てを惜しみなくつぎ込み、そしていずれサバルタの品すら越えてみせるという野心を感じる一品。

「いいね、今泉の紀輔さん。帝都に来たら、いいお店に誘ってみようかな」

機嫌良く言う烏丸は、次の手紙を見る。
至間市長の未亡人からの返書だ。若い未亡人という事で、父の所有物である上物の反物を一反、贈った事の返礼だ。後で父にバレてえらく怒られたが、烏丸はどこ吹く風である。どうせ、どこぞの囲い者にくれてやる為に用意したものだろうに。
ついでにある相談もしたのだが、こちらはあまり色よい返事は貰えなかったようで残念だ。

「若旦那、一体何を考えているんです?」

手代が怪訝そうに声をかける。皇瑯学寮へ入寮してからのこの若旦那は、何かがおかしい。

烏丸秀。才気も無ければ覇気も無い、女遊びと茶の湯以外に興味の無い、政商の二代目のボンボン。
それが彼に対する評価であり、自身も自覚しているはずだった。
その彼が、何故皇瑯学寮なんて似合わないものに入学し、真面目に人脈を築こうとしているのか。

烏丸は微かに笑うだけで答えない。

「――失礼します。烏丸さんですか?」

続いて来客。現れたのは、背の高い海軍士官の服を着た男だった。
待ちわびた客を前に、烏丸は居住まいをただし、手代を下がらせ席を勧めた。



――本当に素晴らしい時代になったものだ。

さぁ、はじめよう。斜陽の帝国に、迫り来る落日。
三公子の誰かを皇帝にする。その後継者の決め方はただひとつ、お互いに相争い、勝ち残ったものが至尊の座を手に入れる。

皇帝陛下のはじめた優雅な遊び。
最後まで楽しもうじゃないか。

Re: SSなどを - 伊勢進駆郎の中の人

2018/05/07 (Mon) 05:53:54

どうも初めまして。
伊勢進駆郎の中の人です。
こちらこそ、これから宜しくお願いします。

さて、早速ですが、SS拝読しました。
烏丸様の放蕩ぶりがとても愉快で面白かったです。また、他のPCの方々にも触れられていまして、その点にも感心致しました。

烏丸様と伊勢はあまり接点は無さそうではありますが、烏丸様のご活躍を切にお祈りしております。

プレ1ターンSS - 今泉紀輔の中の人

2018/04/22 (Sun) 08:45:41

はじめまして。今泉紀輔の中の人です。
皇瑯には推薦枠で、ということで、こんなやりとりがあったかなと想像しながら書いてみました。
既に諏方さんが素敵なSSを挙げていらっしゃいますので、比較すると大変恥ずかしい出来なのですが、お読み流しいただければ幸いです。

------------------------

 夜更け前、書斎の扉が遠慮がちに叩かれた。
「入れ」
 鉱泉金工所の現当主、今泉佐兵衛は、手にした煎豆茶の碗を卓に置き、扉に向かって声をかけた。
「お呼びですか。義父上」
 入室したのは執事に伴われた甥であり婿でもある、紀輔であった。
「ふん。叔父でかまわん。余人の前ならともかく、我が家でそう呼ばれてもむず痒い」
 紀輔は顔色を変えるわけでもなく、はい叔父上と素直に応じた。
「どうだ、首尾は」
 退出する執事に甥のぶんの煎豆茶の支度を命じた後、そう訊ねたのはなんの気なしだったが、紀輔は微妙な表情になった。
「進展はありましたが、なかなかうまくいきません。錬鉄が溶け残りうまく混ざらない。いま炉の構造を検討しています」
 紀輔は話したそうだったが、佐兵衛は手を振って遮った。
 甥が面白いこと――時として突拍子もなく思えること――を思いつくのは佐兵衛もよく知っているし、思いつきにかねをかけることを許したのも佐兵衛自身だが、今夜呼んだのは別の理由があった。その理由であるところの封筒を紀輔に差し出す。
「皇瑯学寮……ですか?」
 燭台の光で封筒の中身を一瞥した紀輔は、不審げな声で問い返した。
「そうだ。見ての通り、お前に入寮を許すとのことだ」
「しかし叔父上。わたくしは高文を受けたこともございませんし、また受かるとも思えません。何かの間違いでは」
 紀輔は露骨に眉をひそめてそう言った。無理はないと佐兵衛も思う。
 紀輔は出来のよい若者だが、その性質が役人向きとは思われなかった。その興味も資質も、窮理学――ことに鉱物と金属に偏っていて、幅広く高度な能力を試される高文試験とはあまり相性がいいとは言えない。
 紀輔の思ったとおりの返答に佐兵衛は苦笑したが、とりなすように言った。
「まあそう言うな。もう一通を見てみろ」
 佐兵衛に促され、紀輔は不得要領に二通目に目を落とし――眉を少しばかり吊り上げた。
「見ての通り推薦状だ。推薦者のうち一人目はワシの知己で主倉の官僚だ。ずいぶん偉くなったものと見える。二人目が――」
「わたくしの実兄、ということでございますか」
 その通り、と佐兵衛は言った。紀輔の実兄、鎌石直輔はいま州畑の直轄校の教授をしている。高文を受けていないので下僚の扱いだが、知己の教導官僚の計らいで、皇都で教鞭をとったこともある。推薦書の教導の担当官僚の署名は直輔の知己であり、また佐兵衛の知己の主倉の官僚、その皇瑯の同期だった。
 が、紀輔はまだ納得のいかない顔だ。
「それだけのことで高文の合格者と同じ扱いになるとは合点が行きません。そもそもあそこは、そのような人治的な特別扱いなどあり得ぬはずでは」
「気持ちはわかるが、早まるな。よく読め」
 再び思ったとおりの反応をする紀輔にもう一度苦笑しつつ、佐兵衛はたしなめた。もっとも気持ちはわからぬでもない。佐兵衛自身、書類を受け取ったときに紀輔と同様の不審を抱いたものだ。
「冶金及び鉱業とその流通に関する臨時雇講師、並びに特別聴講生として任ず……?」
「紀輔、去年だかに直輔の依頼で一文をまとめたな。たしか鉱工提要とか言ったか」
「ああ。ええ、確かに。サバルタの鉱学書と我が帝国のこんにちの鉱業を合わせて概観した程度のものですが」
「それが帝都の教導の誰かの目に止まったらしい。まあワシも含めて帝国の冶金家は実学家ばかりだ。一人くらいああいうものを書ける者がいてもいいし、そいつに喋らせてみてもよい、となったそうだ。ついでに、せっかくだ。帝都の空気を吸って他の教養を積んできたらどうだ」
 佐兵衛の言葉は後半にいくほどに口説き文句になっていったが、半ばは本心でもあった。紀輔は出来がよいと言っても年少のころに私塾で初等教育を受けたあとは、奉公の合間に今泉家の家庭教師にいくばくかの中等教育を施されたに過ぎない。濫読癖があり、佐兵衛の書庫の使用を許してはいたが、高等教育と呼べるものは受けていない。その意味で、願ってもない機会と捉えることも出来た。
「しかし……いま金工所にかかりきりになっていますし。家のこともありますし、急に言われてもどうしたものかと」
 紀輔の返答は煮え切らない。仕事が面白いのだろうし、家のこととは去年祝言を挙げたばかりの嫁、可奈のことだろう。新妻が愛おしくて仕方のない時期だ。
「ワシも孫の顔が見たいのは山々だ。しかしな、わかっているとは思うが、これは断ることなどできぬ話だ」
 佐兵衛は口調を変えた。
「鉱泉がいかな皇祖様の代から続く金工所とはいえ、この度のお召しを無碍にはできん。お上の申出を蹴ってまでお前を金工所に縛り付ける理由は、ワシにはない」
 厳しく言い放つ佐兵衛に、紀輔はうな垂れた。
「それにだ。これはいい機会でもある。お前自身のためにもな」
「わたくし自身の……でございますか」
「そうだ。お前が鉄に熱中するのはいい。しかしお前もよくわかっている通り、鉄を作るにもかねがかかる。買い手のつかない鉄にいくらもかねはかけられん。皇瑯には若い連中が集まる。そして行く行くはそれなりの進路に散る。その中から将来鉄の買い手が出るとも限らん。そういう知己を掴んでおけ」
 佐兵衛は言葉を和らげた。
「お前が傍にいれば心強い。お前が今やっていること、これからやろうとしていることも含めてだ。だが、鉱泉はワシの代だけではない。お前もいずれ一人で歩く。その支度をしてくれ」
 紀輔は深く頭を垂れた。
「かしこまりました」
「なに、長くて2年だ。その間帰郷する暇もある。ついでに、せっかくだからいろいろ学んでこい。鉱学はともかく、帝都であればこそ学び易きものもある。視野を広げるのも仕事のひとつだと思え。もっとも……」
 顔を上げた紀輔の目を覗き込みながら、佐兵衛は厳つい顔に似合わずいたずらっぽく笑った。
「可奈も寂しがる。帰れるときは帰ってくれ」
 紀輔はぱっと赤みの差した顔を手で覆いながら、承知しましたとぼそぼそ言った。

Re: プレ1ターンSS - 伊勢進駆郎の中の人

2018/04/23 (Mon) 07:04:58

初めまして。
伊勢進駆郎の中の人です。
これからしばしの間、宜しくお付き合い下さいませ。

さて、SS拝読しました。
今泉様の叔父様の、今泉様への厳しくも優しい態度を通しまして、叔父様の今泉様への愛情がひしひしと感じられまして、拝読していて心が温かくなりました。とても面白かったです。

今泉様は文官(?)でこちらは武官ですので、お互いの接点はあまりないかもしれませんが、今泉様のご活躍を切にお祈りしております。

Re: プレ1ターンSS - 今泉紀輔の中の人

2018/04/23 (Mon) 20:22:01

伊勢様

はじめまして。ご感想ありがとうございます。
かような拙文にこのような好意的な評価をいただき、歓喜に堪えません!

ゲーム上立場的に絡みにくいかもしれませんが、今後ともよろしくお願いいたします。

お粗末ですが - 諏方薫の中の人

2018/04/19 (Thu) 14:38:31

はじめまして。諏方薫の中の何かです。
キャラ造りがてらちょっとしたSSを書いてみたのですが、せっかくですので貼り付けてみます。ご笑覧頂ければ幸いです。

------------------------
 母を名乗る女が訪ねてきた、と知らされたのは、その日の仕事を終えかけた頃だった。視線を上げれば格子窓越しの日は暮れかけている。溜息をつくと、私は戸口に立っている女将さんに顔を向けた。
「…母は死んだと言った筈ですけど」
「じゃあ生き返ってきたんだろ」
 いつも通りに歯切れのよい、そしてにべもない返答。どう言い返そうか一瞬躊躇している間に、彼女は言葉を継いだ。どこか思案顔なのが珍しい。
「叩き返してやってもいいんだけどさ…だけど余計なお世話は承知で言わせてもらうとすりゃ、こういうのはさっさと始末した方がいいと思うね。小傷も膿むまでほっといたら大事だ」
「…え、と」
「最初に言ったろ、あたしゃあんたがどこの誰だろうと知ったこっちゃないんだ。あたしにとっちゃ、あんたが何をしてくれたかってそれだけが問題なんでね」
 確かにそうだった。
 この店の軒先ではじめて会ったとき、確かに彼女はそう言った。正確には「何をしてくれるかが問題だ」と言ったのだが。ここで過ごした日々の事を思い出しかけたのも一瞬のこと、私は頷いて立ち上がった。
「分かりました。そういうことでしたら会います」
「そうしな。帳面は後回しでいいよ」
「それはもうできてます。あとは役所への届けを何枚か仕上げれば終わりです」
「相変わらず仕事の早いこと。さすがお役人の卵は違うねえ」
 皮肉げに笑う彼女を一瞥すると、私は階下に降りる。
 あれで褒めてくれているのだ。一年もこうしていれば分かる。

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 この店に居着くようになったのは、一年と少し前の雪の日のことだ。
 下働き募集、との張り紙を頼りに軒先に立った私を、どう見ても値踏みするような目つきでじろじろ眺め渡した年増女、それが女将さんだった。年の頃は私の母親だった女と同じくらいか多少若いくらいだろうか。綺麗な人ではあったが、それ以上に百戦錬磨としか表現しようのない勁さと剣呑さを感じさせる女性に思えた。
「あんた、ここがどういう店か分かってんだろうね」
 働かせて欲しいと頼み込む私に、まず彼女はそう言った。
「分かっています」
「…ふん、見たとこ家出娘ってとこかい」
 そんなものは見慣れているとでも言わんばかりに肩を竦め、そして彼女はこう言ったのだ。あたしゃあんたがどこの誰だろうと知ったこっちゃないんだ、あたしにとっちゃあんたが何をしてくれるかってそれだけが問題なのさ、と。
「見たとこ馬鹿じゃ無さそうだ。見てくれも悪くない。とりあえずどう使うかはあんたの働きぶりを見ながら考えるかね…ほら、中に入んな。変なのに見られちゃまずい」
 ほっとしたのが半分、そして不安が半分だったのを覚えている。
 ここがどういう店かは知っていた。女が体を売る店だと。
 それでもいい、それでもあの女よりはマシだ、その時の私はそう考えていた。

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 下級官吏というのも烏滸がましいほどの賎吏だった父が亡くなった日、いつものように母は家にいなかった。
 もう何年も前からそうだった。実直で真面目だけが取り柄だった父は役所に泊まり込む事が多く、そして母も家にいないことがほとんどだった。狭い家も私一人では広すぎる位だったが、それを孤独だとはあまり思わなかった。
 そんなことよりも、父が帰ってきて母の不在を言い繕うのが嫌だった。母は内職をしていることになっていて、その親方のところに行っているのだ、と説明していたが、その実他所の男のところに出かけているのを私は知っていた。
 父は妻の不貞に気づいていたのだろうか、今となっては分からない。
 職場で倒れてそのまま帰らぬ人となった父が同僚に付き添われて戻ってきて、私は母を呼びに愛人宅に走った。
 父を亡くした悲しさよりも、今自分がやっていることの惨めさが先に立つというのも酷い話だ、とどこかで考えながら。

 父の葬儀が終わった日、私は黙って家を出た。
 母が私をどうするつもりだったのかは分からない。母の愛人だった男とは会ったことがあるが、あの視線が何を意味するかなど小娘に過ぎない私にも想像はついたしそれ以上考えるのは悍ましすぎて嫌だった。
 どこかで野垂れ死ぬにしても夜鷹に身を落とすにしても、あの女の近くにいることであり得るだろう未来予想図よりはずっとマシに思えた。ただそれだけだった。

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 娼家の下働きが何を意味するのか、私は分かっているつもりでいた。いずれは体を売って日銭を稼ぐことになるのだろう、と。
 しかし私にはやはり分かっていなかったらしい。後になって考えてみれば簡単なことなのだが、人が集まって何かをするとなると、表の仕事とは別に裏方というのは必要になるのだ。
 きっかけは、遊女達の仕事着の受け取りの遣いに出された時だった。出先で注文と仕上がりの食い違いに気づいた私は、見過ごすこともできずにその場で食い下がったのだ。結局は衣装屋が受け取り金との差額を懐に入れていたのだが、夜遅くになって店に戻り事情を説明した私に女将さんは呆れたような表情を向けた。
「それであの業突張りにピンハネ認めさせたのかい」
「はい。衣装は作り直して三日後に納品すると。こちら証文です」
 納品の期日と返金額を書かせた一筆を添えると、彼女はとうとう笑いだした。
「参ったねこりゃ。この額がどれほどのもんか分かってるのかい?」
「どれほど、とは?」
「あんたがどれだけ身を売って稼げる金かってこった。半月じゃきかないだろうさ」
 どう返事をしたものか迷っている私を改めて眺めると、彼女は頷いた。
「よし、あんたの使い所、決めたよ。店に出すより、こっちのほうが役に立つ」
 そして私は、店の事務仕事を担うようになったのだ。
 それまでは女将さんが一手に引き受けていたこまごまとした雑事を、私は教えられるままにこなしていった。細かい仕事が多かったが、私にとっては難しいことでも辛いことでもなく、むしろ没頭できる何かができたことは楽しくすらあった。
「こりゃいい拾い物をしたよ。あんたくらいに仕事ができる番頭雇うとなるとどれだけ要り用か知れたもんじゃない」
 女将さんもほくほく顔だったのだから、きっとお互いの利益になっていたのだろう。

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 高等文官任用試験を受けてみようと思ったのは、夏の声を聞いた頃だった。
 父が一応は官吏だったこともあって、試験そのものの事は知っていた。合格さえすれば、父とは比較にならないほど偉い役人になれるらしい、と。ただそれを自分が受けようなどとは全く別問題で、考えたこともなかった。
 確か、出入りの商人が話ついでに言ったのだ。それだけ頭が切れるなら、勉強すりゃあの試験にもうかったかもしれないのに勿体無い、云々と。
 ただその試験とやら、十年も二十年も勉強し続けても合格できないなんてザラな話だ、と話は続いたのだが。
 
 女将さんはいつの頃からか小遣いをくれるようになった。大した金額ではないが、たまに出かけてちょっとした服でも装身具でも買えるくらいの額ではあった。
 彼女が言うには、他所の談合に出ることもあるんだからそれなりに見られる格好をしてもらわないと困る、とのことだったが、そんな言い方をしつつも彼女なりに私を気にかけてくれているのは分かっていた。
 その小遣いからかなりの部分を割いて、試験の手引きを買った。手引きと言ってもまるで辞書のような分厚いものが何冊もあり、新品でなどとても揃えられない。仕方がないので古本屋を巡っては一冊ずつ手に入れた。いずれも前に使っていた人の書き込みが目立つ古ぼけたものだった。
 最初は、どんなものだろうという興味が先に立っただけだった。これは結構どうにかなるのではないか、と思うようになったのはしばらく読み進んだ後の事だった。
 仕事を終えた後、私は勉強に没頭するようになった。一人で勉強する私にとっては、前の持ち主の書き込みはかえって役に立ってありがたかった。
 物好きなことだと肩を竦めた女将さんだったが、結局は例によってこう言っただけだった。あたしにとっちゃあんたが何をしてくれるかってそれだけさ、と。

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 数カ月後、私は筆記試験を受け、あっさりと合格してしまった。
 自分ではさほど大したことをしたつもりはなかったのだが、これは結構驚異的な事だったらしい。剛腹な女将さんですら驚愕したくらいだった。
「あたしゃとんでもない拾い物をしたんだねえ…家出娘拾ってみたらお役人になっちまうのかい」
 こいつは運が向いてきたねえ、と付け加えた女将さんだったが、最終試験が試験官との面接で都まで出向くのだと知ると、彼女は路銀だの面接の時に着る小奇麗な服だの色々と用意してくれた。
 旅費は官費でまかなわれるので、と説明しても、彼女は取り合わなかった。
「いいかい、これは先行投資なのさ。あんたが偉い役人になりゃ、あたしの商売だってやりやすくなるってもんだろ」
 したたかな彼女のことだ、それは本心ではあったのだろう。
 だが多分、それだけではない事くらい、私にも分かっていた。

 都での面接は、予想していたようなものではなかった。
 後になって知ったのだが、筆記試験の上位者については面接は形式的なもので、既に合格は決まっているようなものだった。どうやら私もその一人だったらしい。
 面接は、宮中にほど近い広壮な御殿で行われた。試験官と一対一で問われるままに話すだけという内容にも驚いたが、試験官の方も出てきたのが私のような小娘だったことに驚いたらしい。
 なんでも昔は大臣まで務めたのだという試験官は髪も髭も真っ白な老人で、私にお茶と軽食を勧めながら色々な事を聞いてきた。生まれのこと、両親のこと、今までの生活のこと、試験勉強のこと。
 今にして思えばよく分かっていなかった私は、嘘をつく必要性も感じなかったので一つ一つに正直に答えた。その度に、試験官が目を丸くするのが妙におかしかった。
「…して、そなたは何故、この試験を受けて文官になろうと思ったのだね」
 彼の問いに、私は思案しながら答える。
「先ほどお話ししましたが、私の父は真面目なだけが取り柄の賎吏でした。それがお国の為…いや、家族の為と信じていたのでしょう、身を粉にして働いて働いて、とうとう亡くなってしまいました」
「残念なことであった」
「世間の人はよくこう言います。真面目に努力すれば報われる、誰も見ていなくても天は見ていて下さる。日々地道に積み重ねればいつか幸せになれる。父は、地道で真面目であることにかけては他に引けを取ることはない人だったと思います」
「そなたの話によると、確かにそのようだな」
「しかしそんな父を待っていたのは幸せなどではなかった。家は貧しく、あまつさえ妻は不貞を働き、ついにはあのような死に方をしてしまいました。父は全く報われることなどなく、惨めに寂しく世を去った。そんな父を母は裏切り通して顧みることもなかった」
「…続けなさい」
 私は気づいていなかったが、後になって聞いた話、私は涙を流しながらまくし立てていたらしい。
「結局、父は敗北者だった。人を裏切り要領よく振る舞った母は今頃どこぞの愛人にでも収まって安楽に生きているのだとも聞きます。そして無力な私は、それらを傍観するだけで何もできなかった。だから私は考えたのです」
「…地道な努力などよりも、人に必要なのは力である、と?」
「いいえ、いいえ、違います」
 何度もかぶりを振る。
「私は報復しなければならないと。父があのような死に方をしたのは、ただ間が悪かっただけなのだと。真面目な努力は報われる、地道に日々を重ねればいつか幸せになれる、要領よく人を裏切り安楽に生きていくよりも結局はそれが正しいのだと、私は示さなければならないと。父は間違っていなかったと。ただ間が悪かっただけなのだと。その為に、私は試験を受けました」
 言葉が途切れ、静寂が訪れる。
 しばしの後、老試験官は言った。
「ならばそうするがよかろう。私は帝国が人材を得たことを慶賀しよう。そしてそなたの望みが見事果たされた事を慶ぼう。おめでとう、諏方薫。そなたの先行きに幸いのあらんことを」

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 全く、くだらない女だった。
 あと10も若ければ、店に置いてやってもいいだけの顔立ちと体はしていた。だが今の有様では到底商品にはならない。年齢よりは確かに若くは見えたが、しかし内面からにじみ出る険というか、雰囲気のようなものは隠せない。
 実の娘に拒絶され、更に何か食い下がろうとしていたその女を、私は押し留めた。
「うちの使用人に手ぇ出すつもりかい?あんた、ここがどこだか分かってんの?表通りのお上品なとことはわけが違うんだけどねぇ」
 傍らに立ち尽くしている薫に目をやれば、相変わらずの無表情を保っているようには見えるが握りしめた拳の震えまでは隠せない。早く店に入んな、と促した後で、改めてその母を名乗る女に向き直る。
「あの子はね、これから都へ行ってお偉い役人になるのさ。おかげであたしも良い目見させてもらえそうでねえ、全く運が向いてきたとはこのことだよ」
 私の娘だ、と言い募る女。男には捨てられたんだろうか、そういえばずいぶん窶れているようでなあるが。
「…あんたの娘だって?笑わせる、あんたは見限られたんだよ。薄汚い子猫だと思って粗末にしてたあんたが悪いんだ。今になって実は虎だったと分かったもんだから、皮が惜しくなったのかい?」
 私の娘を利用して一儲けするんだろう、と声を荒げる女の顔は、あの少女の母親とは思えないくらいに醜かった。
「ああそうさ、あんたもそうすりゃよかったじゃないか」
 これ以上騒ぐようなら人呼ぶよ、と言い捨てて、私は店に戻った。二階にあがると、薫は何事もなかったかのように書類仕事の続きをしている所だった。
「帰ったよ。もう二度と来ないだろうさ」
「そうですか。こっちももうすぐ終わります」
 顔もあげずにそう応じる少女の姿は、例によってふてぶてしいほど落ち着いて見えた。頭の中で何考えてるかは分からないが、そんなことはどうでもいい。
 私にとって大事なのはもたらされる結果だけだ。
「…全く、あんたがいなくなったらあたしの仕事が増えるじゃないか」
 そう。明後日には、この少女は都へと旅立つのだ。その結果、事務仕事のお鉢が私に回ってくる。迷惑な話だ。
「増えるのではなく、一年前に戻るだけです。余計なものはずいぶん整理しましたから、むしろ楽にはなってるはずですよ」
「なんだい、あんた手を抜く算段しながら仕事してたのかい」
「ええ、明日楽をするために今日頑張るほうがいいじゃないですか」
 そして、あんたはいつまでもここにいるわけじゃなかったんだしね。口には出さないけど、全くこの子は。
「…やり方は覚書にして引き出しにいれてあります」
「そりゃ有り難いね」
 ふん、と鼻で笑うと、私は彼女の手元に銀貨の詰まった袋を置いた。
「なんですか、これ」
「あたしゃ段取りの覚書書く仕事まで頼んだ覚えはないからね、その手間賃さ。あとの余りは先行投資だ、出世したら色つけて返しておくれよ」
「…女将さん」
「馬鹿だね、湿っぽいのは無しだよ。さっさと仕事片付けな、明日は旅の支度で忙しいだろうし」
「はい」
「終わったら何か店屋物でも取ってやろうかね、餞におごってやんよ」
 日も落ちた。こっちの仕事はこれからだ。階下に降りようとした私の背中越しに、薫がこう言ったのが聞こえた。
 ありがとう、と。
「馬鹿だねえ、こっちは投資してるだけさね」
 溜息が一向に様にならないことくらい、自分だってまあ、分かっているのだ。

Re: お粗末ですが - 伊勢進駆郎の中の人

2018/04/23 (Mon) 06:53:47

初めまして。
伊勢進駆郎の中の人です。
これからしばしの間、宜しくお付き合い下さいませ。

さて、SS拝読しました。
諏方様と女将さんが上手にお母様を遣り込めていらっしゃって、気分が爽快になりました。とても面白かったです。

武官と文官という違いはあれど、諏方様はこちらと同じ北府出身ですので、共に北府を盛り立てて行けましたら幸いです。どうか宜しくお願いします。


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